社会的損失40億円?!
徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃 (文春新書)
『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』というショッキングなタイトルの本です。
6人に1人の子どもが貧困という日本社会。
他人事だと放置すれば、43兆円が失われ、政府負担も16兆円増える――!
この数字だけでもギョッとする数字です。
教育に携わる人、というよりも国の根幹を揺るがす大問題なので、もっとメディア等でも報じてもらい、議論すべき問題なのでは、と思いました。
本書で提示されている「子供の相対的貧困」が生み出す「社会的的損失」は次の通り。
社会的損失① 大卒は半減、中卒が4倍増に
社会的損失② 非正社員や無職業者が1割増
社会的損失③ 一人当たりの生涯所得が1600万円ダウン
社会的損失④ 一人当たりの財政収入が600万円減少
社会的損失⑤ 所得が40兆円超、財政収入が16兆円失われる
あくまで現状が放置されると、という前置き付きですが。
ちなみにここでいう「貧困」は『相対的貧困』のことです。(日本のGDP(国内総生産)は世界第3位ですが、「相対的貧困率」はOECD34ヶ国で上から11番目とかなり高い順位です。)
聞き慣れない言葉ですが、以下参考に。
相対的貧困率とは何か:6人に1人が貧困ラインを下回る日本の現状(小林泰士) : BIG ISSUE ONLINE
「相対的貧困」の何が問題なのか? 実感なき数字を、それでも課題視するわけ(湯浅誠) - 個人 - Yahoo!ニュース
本書の問題提起の要点は下記の通りです。
「現在15歳の子ども1学年だけでも、社会が被る経済的損失は約2.9兆円に達し、政府の財政負担は1.1兆円増加する」という衝撃的なレポートが、日本財団より発表されました。
貧困によって学ぶチャンスを奪われた子どもたちは職業選択の自由を奪われ、回りまわって国の税収入は減ってしまいます。
社会保障の「支え手」と期待されている若者たちが、「受け手」になってしまえば、日本国の予算は益々悪化してしまうでしょう。
教育は国の根幹。
教育を受ける経済的基盤が弱い人口の比率が高いと、中長期的に国に重大なダメージを及ぼす、ということです。
この本では、単に問題提起だけでなく、日本や世界各国の解決の糸口になる事例もたくさん紹介されていて勉強になりました。
いくつか気になったものをキーワードだけ、ピックアップして紹介します。
RCT-ランダム化比較試験
貧困世帯への学習支援や奨学金など、政策と成果の中長期的な因果関係がそもそもわからない
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RCT-ランダム化比較試験 ー 政策の因果関係を把握する強力な分析ツール(もともと医学分野で使われていたツール)で把握できる
貧困対策の先駆事例『ペリー就学前計画』
アメリカミシガン州の幼稚園で1960年代に実施された調査(貧困世帯に教育プログラムを実施するグループとそうでないグループにわける)が50年以上経った今も追跡調査されている。
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被験者が40歳時点のデータ分析で、幼児教育は生涯にわたり大きなインパクトをもたらすことが実証。費用対効果(教育プログラムにかかった費用と得られた経済的効果)はなんと16倍。
学力と貧困の相関研究「アベセダリンアンプロジェクト」
ノースカロライナ州オレンジカウンティーで1970年代に実施された調査。貧困世帯にランダムに幼児教育プログラムを受けてもらい、追跡したところ、プログラムを受けたグループは大学進学率が22%改善という結果に。
保護者も巻き込む最新研究「シカゴハイツ幼児センター」
シカゴ大学 ジョン・リスト教授らが主導する2010年からはじまった研究プロジェクト。「シカゴハイツ幼児センター」という幼稚園を2つも作ってしまい、さらに「親の学校(Parents Academy)」という親向けプログラムまで用意している。親向けプログラムが重要、という研究結果が明らかになりつつある。
など、海外の事例が紹介されています。
その他、日本の実態(都道府県別の子どもの相対的貧困率も掲載されています)や取り組み事例、国の動きなども紹介されているので、興味が湧いた方はぜひ読んでみてください。

徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃 (文春新書)
- 作者: 日本財団子どもの貧困対策チーム
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/09/21
- メディア: 単行本
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