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「日本の生産性が低いのはなぜ?」に答える3つの視点とデータ『日本人の勝算 大変革時代の生存戦略(デービット・アトキンソン著)』を読んで得た気づき

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

 

日本の生産性が低いのはなぜ?に答える3つの視点とデータ

たまたまAmazonでレコメンドされた本で、なんとなく興味が湧いたのでポチッとしてみたら「人口減少×生産性向上×教育」というテーマでとても面白い視点とデータが書かれていたので、自分の備忘も兼ねてブログに書いておきたいと思います。

 

書籍全体としては、「これから日本が人口減少するなかで、生産性を上げないと勝ち目はない。では、どうしたら生産性をアップできるか」を、「企業規模」「最低賃金」「教育(大人のトレーニング)」の3つの視点とデータを絡めて論じています。

 

この本『日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義』です。

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日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

 

  

その面白いと思った視点とデータは、この3つです。


①日本の生産性が低いのは中小企業が多いせい?

②最低賃金を上げると生産性が上がる?

③日本の教育はすばらしいが、大人になってからの教育が貧弱

 

3つ目は、世の中でもすでに言われていることかもですが、①②は「むむむ・・・!」というかんじだったので、面白いなと思いました。

 

1つずつ追っていきたいと思います。

 

①日本の生産性が低いのは中小企業が多いせい?

日本の企業の9割以上が「中小企業」であることはご存知の通りですが、日本の生産性が低い理由は、「極めて規模の小さい会社が多すぎること」と論じています。

 

 
生産性向上を実現させるために 、さらにどうしても避けて通れない問題があります 。それは 、日本には規模のきわめて小さい企業が多すぎることです 。この小さい企業の多さが 、日本の生産性の低さの最大の原因なのです 。図表 4 ‐ 1にありますように 、日本では 2 0人未満の社員の企業で働いている労働者の比率が全労働者の 2 0 ・ 5 %と 、異常に高くなっています 。さらに 3 0人未満まで含めると 、なんとその比率は 2 9 ・ 9 %まで上がります 。

 

中小企業の社長さんが聞いたらカチンときそうな話ですが、この本のなかでは「生産性と中小企業で働く人の割合の相関性」を具体的なデータをもとに論じています。

 

そのデータの図がこちらです(本書より引用)

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さらに、日本人は、個々の人材評価はランクづけが高い(世界4位)のに、生産性はイタリア(人材ランク35位、生産性ランク32位)やスペインよりも少し高いだけ(生産性ランク世界28位)という「逆転現象」についても触れています。

 

人材評価では日本人は非常に高くランクされているのに 、生産性に関してはイタリアやスペインより少し高い程度です 。

スペインの生産性は世界第 3 2位ですが 、人材評価は第 4 5位です 。イタリアは生産性が第 3 4位に対して 、人材評価は第 3 4位です 。

ならば 、なぜ人材評価で世界第 4位の日本の生産性が 、第 2 8位なのか 。ずっとその原因を探ってきたのですが 、きわめて小さい企業に働いている日本人の割合がスペインやイタリアとあまり変わらないことを発見し 、その謎がやっと解けました。

 
逆に 、アメリカの人材評価は第 2 4位ですが 、生産性は第 9位となっています 。これも企業規模で説明できます 。従業員数が 2 5 0人以上の企業で働くアメリカ人労働者の比率が 4 9 ・ 8 %にのぼるのに対し 、日本はたった 1 2 ・ 9 %にすぎないのです (図表 4 ‐ 2 ) 。この発見もきわめて重要です 。

 

ちなみにアメリカは個々の人材ランク評価は世界24位、でも生産性ランクは9位です。

これを引き起こすのは「企業規模」だと論じています。

 

著者が着目しているのは、

「企業規模が小さすぎると、人材トレーニング(育成)が十分にできない」 

「だから、零細企業・中小企業勤務が圧倒的に多い日本は生産性が上がらない」

という因果関係です。

 

たしかに、小さい会社では社員の教育体制は十分と言えないケースも多いですし、そこに投資する余裕もないケースも多々あります。

また、業務の標準化やノウハウの横展開、共有という面でも、規模の大きい企業と比べれば不十分なケースも多いでしょう。

各国のデータをみても、相関性がかなりあるようですし、社員の教育と生産性に関係がある、というのは確かにと思います。

(ただ、そういう言われても、企業側からしたら困ってしまうとも思いますが、、、)

 

②最低賃金を上げると生産性が上がる? 

2つ目も、けっこうパンチの効いた切り口です。

よく「最低賃金を上げると、雇用が減って失業者が増える」という論調は耳にしますが、これはその真逆です。

「生産性が上がって業績がよくなるから、最低賃金を上げられる」

のではなく、

「先に最低賃金を上げる。それに対応できるように迫られて生産性が上がる」

というロジックです。

 

「卵が先か 、鶏が先か 」という議論は当然あります 。生産性が高いから最低賃金が高いのか 、最低賃金が高いから生産性が高いのか 。これはきわめて根本的な問題です 。しかし 、相関関係がきわめて強いことは間違いありません 。


さまざまな国のエコノミストたちは 、最低賃金と生産性の相関があまりにも強いので 、 「生産性が高いから最低賃金が高くなった 」という可能性はとりあえずおいておくことにしました 。まずはその相関が強い以上 、発想を変えて 、 「最低賃金を引き上げることによって生産性を向上させられるのではないか 」という仮説を立て 、実験を始めているのです 。これも大きなパラダイムシフトと言えます 。

 

要は「最低賃金」だけ上げると企業はやっていけないので、社員をトレーニングし、企業として生産性を高めて、業績を維持向上させるトリガーになる、という理屈です。

 

まさに「卵が先か、鶏が先か」と同じ議論ですが、その実践例としてイギリスの例が紹介されていました。

 

世界中のエコノミストが注目し、こぞって研究しているのがイギリスです。

イギリス政府は1999年に最低賃金制度を導入し、何年間にもわたって毎年最低賃金を引き上げてきました。

最低賃金を引き上げている国にはある共通の特徴があります。 それは、今後大きな人口の伸びが期待できないことです。生産性を向上されることに対して強い関心を抱いているのです。

 

書籍のなかでは、もちろん乱暴に最低賃金をあげればいいということではなく、どういったケースでこの政策が機能するのか具体的に述べられていました。 

また、他にもデンマークなどでの成功例の紹介もありました。

 

ポイントとしては、日本ではよく米国と比較して何事も論じられることが多いかと思うのですが、そもそも米国は人口が増えている国なので、人口減少国の日本は参考にすべきではない、という視点です。

 

ヨーロッパのように「高生産性・高所得経済」型に切り替えていく必要性を、著者も繰り返し述べています。 

 

 ③日本の教育はすばらしいが、大人になってからの教育が貧弱

①②は「中小企業で働く人の割合」と「最低賃金」の視点から「生産性」との因果関係について論じていましたが、つまるところは「社員のトレーニング(教育)」をどれだけするか(できているか)という点に話が至っています。

 

書籍の後半では、ダイレクトに「日本の生産性が低いのは、大人になってから勉強しないから」とストレートに論じています。

 

たとえば 、 O E C Dのデ ータを使ったフィンランドと日本の生涯通学率を見ると 、日本では 2 5歳以上はほとんど学校に通っていません 。

高知工科大学がまとめた論文 「日本における生涯学習の現状と課題 」では 、 2 5歳以上の通学率は日本ではわずか 2 ・ 0 %ですが 、 O E C Dの平均は 2 1 ・ 1 %であると記載されています 。

 

たしかに日本で社会人で大学院にいったり学校に通うというのはまだまだレアケースかもです。リカレント教育(大人の教育、生涯教育)という言葉も少しずつ浸透してきているかもですが、ヨーロッパなどと比べると、まだまだ弱いのが現実だと思います。

 

研修参加率と生産性の関係、というデータもありました。

 

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②の最低賃金との絡みに話が戻りますが、人材トレーニングをどうすべきか、具体的にどのような効果があるか、という点を、各国の例やデータをもとに論じていました。

 

最低賃金を上げることを正当化するには、それに見合うだけの人材のスキルアップが必要。最低賃金を上げるにはトレーニングが不可欠。

人材育成トレーニングの導入を考える場合に重要になるのが、それを任意にするか強制にするか。強制型のトレーニングの例としては2017年に導入されたイギリスの例がある。

すでに説明したように 、イギリスは最低賃金を政策的に引き上げて 、高生産性 ・高所得経済への移行を目指しています 。

ドイツの分析「The Impact of Training Inernsity on Establishment Productivity」では、トレーニングを受けている社員の比率を1%あげると、次の3年間で生産性が0.76%上がると分析している

 

日本の企業のなかでは「社員の研修は意味がない(やらされ意識が強くて身にならないから)」「座学の勉強は役に立たない」という論調もあるかと思いますが、最後のデータなどを見ると、このあたりは根本的に再考しないといけないのでは、と思いました。

 

要するに 、日本は子どもの教育はすばらしいのですが 、成人してからの教育がきわめて貧弱なのです 。

 

最後のこの一言は、ズシリと重く刺さります。。。

 

人口減少する日本で「生産性向上」は逃げ道のない宿題だと思いますが、勤勉で真面目な日本人がなぜ生産性が低いのか、さまざまなデータをもとに新たな視点を得られる一冊だと思いました。

 

大人の教育(トレーニグ)という視点では、前に講演で話を伺った83歳・世界最高齢iPhoneアプリ開発者の若宮正子さんの生き方や学びに対するスタンスが、とてもヒントがあるのでは、と思い返しました。

 

www.hirokiyokoyama.jp

 

 「人生100年時代」というフレーズが流行り言葉になっていますが「大人になってからの教育をどうするか」は、大真面目に考えていかないといけない、大きな課題だと改めて思います。

 

人口減少、生産性向上、大人の教育、などのテーマで興味がある方は、ぜひ読んでみてください(^_^)  

 

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義

日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義